里山で身につける一生使える技術、オープンフェースノッチを実践する


12月21日にフォレストリー・ラボ初級が開催されました。

今回のラボでは、茨城県常陸大宮市の静かな里山に寄り添う「雪村庵/緑隠雪村庵」をフィールドに、
午前中は、間伐作業における選木方法について実地を交えながら指導を行いました。
里山林の管理では、「どの木を残し、どの木を伐るか」という選木の判断が、森林の将来を左右する重要な工程となります。

里山林とは何か

里山林は、地域の自然条件と人間の営みによって形づくられてきた二次林であり、場所ごとに異なる林相を持っています。

例えば、

  • 関東地方のコナラ・クヌギ林では、薪炭林として約20年周期で伐採と萌芽更新が繰り返され、林内は明るく、草本類や昆虫が豊富に見られます。
  • 西日本のアラカシ・シイ類を含む照葉樹林では、広葉樹が混じり合い、野鳥や小動物の重要な生息地となっています。
  • 中山間地のスギ・ヒノキ人工林と雑木林が混在する里山では、適切な間伐によって人工林の健全化と広葉樹の更新を両立させる管理が求められます。

このように里山林は、人の手が継続的に入ることで、生物多様性が保たれてきた「人と自然の共存の場」であり、地域の文化や暮らしとも深く結びついています。

間伐の役割と重要性

間伐は、森林の健全性を維持するために欠かせない作業です。

間伐とは
森林の成長段階に応じて立木の本数を減らし、密度を調整することで、残された木が健全に成長できる環境を整える作業です。

間伐の主な目的

  • 光や養分を確保し、残存木の成長を促進する
  • 過密による病害虫の発生リスクを低減する
  • 下層植生を回復させ、生物多様性を高める

間伐を適切に行うことで、木材の質が向上するだけでなく、土壌の保全や水源涵養といった環境保全機能も高まります。

選木方法の考え方

間伐の成否を左右するのが「選木方法」です。選木は大きく定性間伐定量間伐の2つに分けられます。

1.定性間伐

木一本一本の状態を見極めて判断する方法です。

  • 成長が良く、将来性のある木を残す
  • 病虫害木、衰弱木、被圧木を優先的に伐採する
  • 樹種、樹形、樹冠の広がりなどを総合的に評価する

里山林のように多様な樹種が混在する林分では、特に重要な考え方です。

2.定量間伐

立木密度や本数を基準に、数値的に間伐量を決める方法です。

  • 残存本数や間隔をあらかじめ設定する
  • 林分全体のバランスを重視する
  • 人工林などで効率的に行われることが多い

選木の具体的な基準

選木の際には、以下の点を総合的に判断します。

  • 樹木の健康状態
     劣勢木、衰弱木、被圧木を伐採対象とする
  • 樹形・樹冠
     均整が取れ、十分な樹冠を持つ木を残す
  • 樹種の適応性
     地域環境に適した樹種を優先的に保全する
  • 将来の成長性
     今後の成長や材価向上が見込める木を残す
  • 生態系への配慮
     野鳥の営巣木や多様な生物の利用する木も考慮する

標準地調査の実施

今回の実習では、間伐計画の基礎となる標準地調査も行いました。

標準地調査では、

  • 胸高直径や樹高、樹種、樹齢などの立木情報
  • 標高、傾斜、方位、土壌条件などの地況
  • 生物多様性や林内環境の状況

を調査し、森林の現状を客観的に把握します。これにより、今後の森林整備方針を科学的根拠に基づいて検討することが可能となります。

午後からはオープンフェースノッチによる安全な伐木作業をお教えしました。

伐木作業は、手順を誤ると重大事故につながる非常に危険な作業です。特に重要なのが、木を「どの方向に」「どのように」倒すかを確実にコントロールすることです。そのためには、伐倒の仕組みを理解したうえで、正確な伐採手順を守る必要があります。

フォレストリー・ラボでは、安全性と再現性に優れた北欧式の伐採技術である「オープンフェースノッチ」を採用しています。この方法は、木が倒れる瞬間まで方向を制御しやすく、作業者の安全確保に大きく貢献します。

オープンフェースノッチとは

オープンフェースノッチとは、受け口を広い角度で開く伐倒方法です。木が倒れ始めてから地面に着く直前まで、ツル(蝶番部分)が機能し続けるため、倒れる方向を安定してコントロールできるのが最大の特徴です。

オープンフェースノッチは、

  • 伐倒方向を正確にコントロールできる
  • ツルを最後まで機能させられる
  • 作業者の安全性を大きく高める

という点で、現在最も信頼性の高い伐木技術の一つです。
正しい手順と構造を理解し、一本一本の木に対して丁寧に作業を行うことが、安全な伐木作業につながります。

伐木の基本手順と構造の理解

① 受け口の作成(倒したい方向に作る)

まず、木を倒したい方向に受け口を作ります。
オープンフェースノッチの受け口は、くの字型の切り込みになります。

  • 倒したい方向に向かって、
    上から下へ約60度(最大90度)の角度で斜めに切り込みを入れます。
  • 次に、地面と平行に切り進め、
    幹の直径の約1/3~1/4の深さまで切ります。
  • この2つの切り込みが正確に合わさることで、
    大きく開いた受け口が完成します。

この広い角度の受け口により、木が傾いても受け口がすぐに閉じず、倒れる動きを最後まで誘導できる状態が保たれます。

② 追い口の作成(反対側から水平に)

受け口が完成したら、反対側から追い口を切ります。

  • オープンフェースノッチでは、
    受け口の下切り部分(会合線)の高さと同じ位置に、水平に切り込みます。
  • 追い口は、受け口に向かって慎重に進め、
    受け口との間に「ツル」を残すことが重要です。

この高さを揃えることで、年輪の影響を受けにくくなり、ツルの厚みと幅を正確に確保しやすくなります。

ツル(蝶番)の役割を理解する

ツルとは、受け口と追い口の間に意図的に残す木の部分で、
木が倒れる際の「蝶番(ちょうつがい)」の役割を果たします。

  • ツルが適切に残っていれば、
    木は計画した方向に沿って、ゆっくりと倒れていきます。
  • ツルが不均一だったり、薄くなりすぎると、
    途中で折れたり裂けたりして、木が予期しない方向に倒れる危険があります。

特に、受け口の下切りと斜め切りが正確に合っていない場合、ツルが不安定になり、方向制御が効かなくなります。

オープンフェースノッチの安全性が高い理由

  • 受け口の角度が広い(60~90度)
    → 木が大きく傾くまで受け口が閉じず、ツルが長く機能する
  • 追い口を会合線と同じ高さにする
    → ツルの形が安定し、倒れる方向を正確に誘導できる
  • 倒れる直前までコントロールが効く
    → 作業者が木の動きを予測しやすく、退避判断がしやすい

このように、オープンフェースノッチは「力任せに倒す」のではなく、木の構造と力の流れを利用して、安全に倒す技術です。

注意点

追い口が必要以上に低い位置になると、
ツルが追い口側から上方向に裂ける「立ち割れ」が起こりやすくなります。
これは伐倒方向の急変や跳ね返りの原因となるため、追い口の高さ管理は特に重要です。

これらのことを踏まえ、受講生の皆さんにオープンフェースノッチを用いての伐木方法を実践していただきました。

次回のラボは2月16日に開催されます。

あなたにぴったりのチェンソーや刈り払い機の選び方から始めて、使い方やメンテナンス方法、安全な取り扱い方法、効果的な作業手順など、必要な知識と技術を一から丁寧に教えます。特に、危険性のある作業だからこそ、安全で確実な技術を身につけることを重視しています。

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