丸太七輪づくりで学ぶ森林資源の活かし方


https://www.instagram.com/iwasakiforestry

https://www.instagram.com/p/DWzP0n0komh

3月15日にフォレストリー・ラボ初級が開催されました。

この日のラボでは、午前中はチェーンソーの簡単なメンテナンス、午後からは丸太七輪の作製作しました。

捨てられる木を“便利な七輪”に。――丸太七輪という発想

山に入ると、間伐材や虫食い材がそのまま放置されている光景をよく目にします。

本来なら山の健康のために伐られた木なのに、使い道がなく朽ちていく――。

そんな課題に対して、「丸太そのものを七輪として活用する」というユニークなアイデアが生まれました。

今回作成する 「丸太七輪(特許JP2018115846A)」 は、まさに“捨てられる木を価値ある道具に変える”ための工夫が詰まったアイテムです。

丸太七輪とは?

丸太七輪は、丸太に少しの加工を施すだけで、調理や暖房に使える燃焼器具として機能するものです。

チェーンソーさえあれば現場で加工でき、災害時の熱源としても役立ちます。

しかし、ただ丸太に穴を開けただけでは、火がつきにくかったり、燃焼が安定しなかったりします。

この丸太七輪では、その弱点を解消するための“燃えやすく、安全で、扱いやすい構造”が提案されています。

「燃えやすい丸太七輪」の仕組み

① 上部に半球状の“くぼみ”

丸太の上に、着火剤や炭を置ける凹部を作ります。

火が中心に集まりやすく、着火がスムーズになります。

② 側面から斜め上に伸びる“空気孔”

丸太の側面に、上部の凹部へ向かって空気が流れる穴を開けます。

これにより自然な上昇気流が生まれ、火力が安定します。

③ 空気孔は複数配置

風向きに左右されず、どの方向からも空気が入りやすい構造。

空気孔を塞ぐことで火力調整も可能です。

④ 灰が舞いにくい構造

上下が貫通していないため、消火時に灰が飛び散りにくいのも大きなメリットです。

全国で急増する松くい虫・ナラ枯れ

全国で 松くい虫被害(マツ材線虫病)ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)の被害が問題になっています。

松くい虫被害木(まつくいむしひがいぼく)とは?

松くい虫被害木とは、マツノザイセンチュウという線虫(せんちゅう)が松の木の内部に入り込み、 

木を枯らしてしまった結果できる「被害を受けた松の木」のことです。

松くい虫という名前ですが、実際に木を食べる“虫”がいるわけではありません。 

正確には、線虫を運ぶカミキリムシ(マツノマダラカミキリ)が媒介となって松が枯れてしまいます。

なぜ松が枯れてしまうのか?

松くい虫被害の仕組みは次の通りです。

1. マツノマダラカミキリが松の木に産卵する

2. カミキリムシの体に付着していた 「マツノザイセンチュウ」が木の内部へ侵入

3. 線虫が松の水分通路(仮道管)をふさいでしまう 

4. 木が水を吸えなくなり、急速に枯れてしまう

被害が進むと、夏の終わり頃には緑だった松が一気に茶色く変色し、立ち枯れ状態になります。

日本の森林で深刻な問題に

松くい虫被害は、 

– 日本全国のアカマツ・クロマツ林で発生 

– 毎年多くの松が枯死 

– 景観悪化、土砂災害リスクの増加 

– 林業・観光への影響 

など、社会的にも大きな問題になっています。

特にアカマツ林が多い地域では、山の景観が大きく変わってしまうほどの被害が出ています。

ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)とは

ミズナラ・コナラ・カシ類などの ブナ科広葉樹が集団的に枯れる病害で、近年急速に拡大しています。

1. 原因

ナラ菌(カシノナガキクイムシが運ぶ菌)が木の内部に侵入

媒介するのは カシノナガキクイムシ(体長5mmほどの小さな甲虫)

2. 枯れる仕組み

カシノナガキクイムシが木に穴をあけて穿入

その際に ナラ菌が木の内部へ

菌が水分通路をふさぎ、

葉がしおれ、夏の終わり〜秋にかけて急激に枯死

3. 全国の被害状況

2000年代以降、西日本から東日本へ急速に拡大

現在は 北海道南部〜九州まで広範囲で発生

ナラ類は里山の主要樹種のため、被害は生活圏にも直結

大径木が多く、倒木リスクが高い

4. 社会的影響

公園・神社・里山での 倒木事故リスク

生態系への影響(ドングリを食べる動物の減少)

景観悪化

薪炭材・シイタケ原木の供給減少

5. 主な対策

被害木の伐倒・くん蒸処理

予防的な樹幹注入(殺菌剤)

伐採木の放置禁止(虫の繁殖源になる)

地域単位での一斉対策(個別対応では効果が薄い)

松くい虫とナラ枯れの共通点・違い

共通点

どちらも 昆虫が媒介する病害

木の水分通路が詰まり 急激に枯れる

全国的に拡大し、森林・景観・安全に大きな影響

被害木の 適切な処理が必須

松くい虫とナラ枯れの違い

項目松くい虫ナラ枯れ
主な被害樹種アカマツ・クロマツコナラ・ミズナラ・カシ類
原因マツノザイセンチュウ(線虫)ナラ菌(真菌)
媒介昆虫マツノマダラカミキリカシノナガキクイムシ
被害の広がり1970年代から全国的に拡大2000年代以降急速に拡大
主な対策伐倒駆除・薬剤注入・抵抗性品種の植栽伐倒処理・薬剤注入・くん蒸

被害木の利活用(松・ナラ共通)

被害木は放置すると虫の繁殖源になるため、伐採後の活用が重要です。

薪・焚き付け

キャンプ用燃料

木質バイオマス

チップ材

松くい虫被害木は特に 松ヤニが多く火力が強い

「被害木」は価値ある資源にもなる

枯れてしまった松やナラは、放置すると倒木の危険があり、 

処理にも手間がかかります。

しかし、実は 松くい虫被害木には“燃料としての価値”がある ことが知られています。

– 水分が少なく乾燥している 

– 松ヤニが多く、よく燃える 

– 火力が強い 

– 着火しやすい 

そのため、 

丸太七輪・薪・焚き付け・キャンプ用の燃料として非常に優秀です。

被害木を活用することで、 

「山の問題を資源として活かす」という循環にもつながります。

アウトドアでも災害時でも役立つ

丸太七輪は、次のような場面で活躍します。

キャンプでの調理・焚き火

災害時の暖房・湯沸かし

山林整備の副産物としての活用

地域資源を使った商品づくり

チェーンソーがあれば現場で加工できるため、運搬の手間も少なく、山の資源をその場で活かせます。

“山の課題”を“地域の価値”に変える丸太七輪

丸太七輪は、「丸太をそのまま七輪として使う」というシンプルな発想を、
実際に使える形にまで工夫したものです。

使いやすさにも優れており、

  • 火がつきやすい
  • よく燃えて火力が安定する
  • 灰が飛びにくい

といった特徴があります。

また、特別な設備がなくても現場で作ることができ、
災害時の調理や暖をとる手段としても活用できます。

さらに、これまで使われずに放置されていた木材の活用にもつながります。

つまり丸太七輪は、
山の手入れという課題を解決しながら、地域に新しい価値を生み出す道具といえます。

環境への貢献

丸太七輪は、間伐材や害虫被害木といった、これまで有効活用が難しかった木材を利用しています。​特に、松くい虫被害木は水分が少なく松ヤニを多く含むため、火力が強く、熱源として非常に適しています。​このような木材の活用は、里山の再生や森林資源の有効利用に貢献します。​

フォレストリー・ラボ初級の全カリキュラムが無事に終了しました!

最後に、受講生の皆さんへ修了証をお渡しし、今年度のフォレストリー・ラボ初級はすべてのプログラムを終えることができました。

これまで熱心に参加してくださった受講生の皆さん、本当にありがとうございました!
皆さんと一緒に学び、体験を重ねた日々は、私たちにとってもかけがえのない時間となりました。


PAGE TOP