7月6日にフォレストリー・ラボ中級コースが開催されました。
今回の作業では、チェーンソーの「キャブレター(燃料を送る装置)」を実際に分解してみました。
エンジンの調子が悪くなる原因の多くは、このキャブレターに問題があることが多いです。キャブレターは、小さな穴や部品がたくさんあり、最初は複雑に感じるかもしれませんが、基本の構造と役割を理解すれば、誰でも分解・清掃・調整ができるようになります。
キャブレターの役割とは?
キャブレターは、エンジンが動くために必要な「混合気(ガソリンと空気を混ぜたもの)」をつくる装置です。ガソリンだけでは燃えにくいため、空気と混ぜて霧のようにしてからエンジンに送ります。この「ガソリンと空気の割合」を調整しているのが、キャブレターの主な役目です。
キャブレターの3つの基本的な働き
- ガソリンを霧状にして空気と混ぜる
液体のままのガソリンはうまく燃えません。キャブレターはガソリンを細かい霧のようにして、空気と混ぜてからエンジンに送ります。これにより、少ない燃料でも効率よく力を出すことができます。 - エンジンの力(出力)を調整する
キャブレターは、空気と燃料の量を調整することで、エンジンの強さ(パワー)を変えます。アクセルを開けるとエンジンの回転が上がるのは、このしくみです。 - エンジンの回転数をコントロールする
アクセルを踏んだり離したりすると、キャブレターが送る混合気の量が変わり、それに応じてエンジンの回転数(回る速さ)も変わりま
キャブレターの種類
キャブレターには大きく分けて2種類あります。
- フロート式:農業用の機械など、大きめのエンジンに使われます。水平に置く必要があり、傾くとガソリンがうまく流れません。
- ダイヤフラム式:チェーンソーや刈払機のような小型のエンジンに使われます。どんな角度でも使えるのが特徴です。
ダイヤフラム式キャブレターの構造と働き
ダイヤフラム式キャブレターの図を参照しながら、その構造を説明いたします。
ダイヤフラム式キャブレターは、主に次のような構成になっています:
- 1. ポンプ室(燃料ポンプ)
- 2. メタリング室(燃料調整室)
- 3. スロットルバルブ
- 4. チョークバルブ
- 5. ダイヤフラム(薄いゴム膜)
- 6. ニードルバルブ(燃料の弁)
- 7. インレットスクリーン(燃料フィルター)

赤いのは混合ガソリンの流れで、青いのは空気の流れです。アイドリング状態では、idle needle(Lニードル)の3つの穴のうちの1つから混合気がピストン内に送り込まれています。左手の空気の流れを止めているのがスロットルバルブで右側の空気を通しているのはチョークバルブです。
【燃料の流れ】
① 燃料ポンプ(ダイヤフラムポンプ)
- エンジンが動くと、クランクケース内の圧力が変化します(正圧・負圧の繰り返し)。
- この圧力変化がゴム膜の ポンプダイヤフラム に伝わり、燃料を吸い上げる動作をします。
- チェックバルブ(逆止弁)により、一方向にしか燃料が流れないようになっています。
② メタリング室(燃料量を調整)
- ポンプから送られた燃料は、インレットスクリーンを通ってゴミを除去され、メタリングダイヤフラム側の部屋に入ります。
- メタリングダイヤフラムは、内部の燃圧によって上下に動き、ニードルバルブを開閉します。
- これにより、エンジンの負荷や回転数に応じた適量の燃料が供給されます。

図に示されているように、チョークを閉じると空気の流れが遮断され、ピストン内へはより多くの燃料が供給されます。
【空気の流れと混合気生成】
スロットルバルブとチョークバルブ
- チョークバルブ(始動時に空気を制限)
→ チョークを閉じると、空気の流れが制限され、濃い混合気ができて始動しやすくなります。 - スロットルバルブ(アクセル開度に応じて空気量を調整)
→ スロットルを開くと、空気の流量が増え、ベンチュリー効果によって燃料が吸い上げられます。

アクセルを開けると、nozzle部分のニードル(針)はスロットルバルブ(ニードルを固定している円筒の部品)と一緒に上に上がります。
「アクセルを開ける」とは、キャブレター内の空気の通り道と、ニードルでふさがれていた燃料の出口を徐々に開いていくことを指します。
燃料タンクから送られたガソリンは、細い管(図の中心部)を通ってキャブレター内の空気の通り道に繋がります。空気がこの通り道を通ると、ガソリンがこの管から吸い上げられて混合気となります。
空気の量を調整するのがスロットルバルブで、吸い上げられる燃料の量を調整するのがニードルです。
ニードルは先端が細くなっており、上に引き上げられると燃料が出る隙間が広がります。
アクセルが少ししか開いていないと、通る空気の量が減り、燃料を吸い上げる力も弱くなります。
キャブレターはベンチュリー効果を利用して、圧力差を生み出します。空気がキャブレターを通過する際に生じる負圧により、ガソリンが吸引されます。空気の通過路が狭まると流速が増し、水のホースの先を絞ると水流が強くなるのと同様です。この流速の増加が圧力を下げ、キャブレター内のガソリンを吸い上げ、霧状の混合気を作り出します。
ベンチュリー効果は、空気や水などの流体が速く流れると圧力が低下する現象を指します。この圧力差が生じると、均一な圧力を求める力によって、管から燃料が引き抜かれることになります。例えば、高速道路で走行中に車の窓を開けると、車内の空気が外へ抜けるのは、外の圧力が車内よりも低いためです。
【ベンチュリー効果と燃料噴出】
- キャブレター内の空気通路(ベンチュリー)で空気が加速されると、圧力が下がり、負圧が発生します。
- この負圧により、メインノズルやアイドルノズルから燃料が吸い上げられ、空気と混ざり「霧状の混合気」が生成されます。
- この混合気がエンジンの吸気ポートを通じてシリンダーに供給されます。
アクセルを開けると、ニードルとホルダーが中心で上下動し、キャブレター内の燃料吐出量が複雑に調整されるわけではないのです。実際は、アクセルによって空気の流入量が調整され、その量に応じてガソリンが引き出されるのです。これによってエンジンの回転数が増減します。
キャブレターには、アクセル操作によって空気の流量を調整する際にガソリンの出口の大きさ(断面積)を変えるタイプと、大小の燃料穴が設けられており、空気の通路の開閉のみを行うバタフライ方式が存在します。バタフライ方式は、特にチェーンソーのキャブレターで採用されています。
ダイヤフラム式キャブレターは、ダイヤフラムという部品を使用してキャブレター内へ燃料を供給し、適切な量を維持するように設計されています。
チェーンソーはさまざまな角度で使うことがあります。フロートタイプのキャブレターでは、キャブレターが常に水平でないと、溜まっている燃料が漏れ出して正常に使えません。この問題をオーバーフローと呼びます。一方、チェーンソーのキャブレターはフロートを持たないため、非常にコンパクトにできます。また、燃料ポンプも内蔵しているため、燃料タンクがキャブレターの下にあっても問題ありません。
メリットが強調されがちですが、小型キャブレターは消耗品で構成されているというデメリットも持っています。
キャブレターの清掃と調整
キャブレターの中をきれいにするには、専用の「キャブレタークリーナー」を使います。泡状のクリーナーが部品の細かい隙間に入りやすく、汚れを落としやすいです。
ただし、ゴムの部品には強い薬品が悪影響を与えることがあるので、ダイヤフラム式の場合はゴムにやさしいタイプのクリーナーを選びましょう。
汚れの吹き飛ばしにはエアコンプレッサーを使うのが理想ですが、なければパーツクリーナーでも対応できます。
キャブレター不調の原因と関係する部品
| 症状 | 主な原因となる部品 |
|---|---|
| 燃料を吸わない | プライマリポンプ、チェックバルブ、ニードルバルブなど |
| エンジンがかからない | ダイヤフラムの劣化、ジェットの詰まり |
| 燃料が漏れる(オーバーフロー) | ニードルバルブの不良 |
| 吹け上がらない | 燃料の通り道やポンプの劣化 |
| 回転数が徐々に下がって止まる | ダイヤフラムの硬化など |
特に、ダイヤフラム膜(うすいゴムの膜の部品)が硬くなると、エンジンの不調が出やすくなります。
ダイヤフラム膜(ダイヤフラム・メータリング、ダイヤフラム・ポンプ)の硬化は、硬化の程度によってエンジンの症状が変わります。
初期段階では、アイドリングや低速での回転時にエンジンが停止することがあります。
チョークを開けた瞬間にエンジンが停止する場合は、燃料の劣化が原因である可能性があります。
また、エンジンが直ちに停止するか、始動しない場合は、ダイヤフラム膜の硬化や詰まりだけでなく、水の混入も考えられます。
ダイヤフラム式キャブレータはエンジンの角度に関わらず安定した油面を維持できる利点がありますが、部品が多く、ダイヤフラム膜のような消耗品に依存しています。そのため、清掃しても症状が改善しない場合があります。
チェーンソーのキャブレター調整方法
キャブレターには、調整用のスクリュー(ねじ)が3つ付いています。
| スクリュー | 役割 | 時計回り(右回し) | 反時計回り(左回し) |
|---|---|---|---|
| L(低速) | アイドリング時の燃料量調整 | 燃料減り回転数上昇 | 燃料増え回転数低下 |
| H(高速) | 高速回転時の燃料量調整 | 燃料減り回転数上昇 | 燃料増え回転数低下 |
| LA(アイドル調整) | アイドリング時の回転数調整(スロットル開度) | 開度増→回転数上昇 | 開度減→回転数低下 |
この調整には、エンジンの正確な回転数を確認するための「デジタルタコメーター(回転計)」を使うのが一般的です。
受講者の皆さんは、それぞれ自分のチェーンソーのキャブレターを分解し、内部の汚れを清掃して再組み立てしました。その後、デジタルタコメーターを使って、アイドリングや高回転の調整も体験しました。
キャブレターの構造と機能を理解し、実際に手を動かすことで、今後のメンテナンスにも自信を持てるようになったかと思います。
次回のラボは8月3日を予定しています。
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