地ごしらえは、森林造成を行う際に、苗木の植え付けや天然更新、保育作業を容易にするために行う枝条整理、掻き起こしなどの準備作業の総称です。伐採後の人工林に再び植栽できるよう土地を整えることが目的であり、切り株や多くの枝条を整理し、新たな苗を植え付けるための土地を整えます。近年では重機を活用して伐採、地ごしらえ、植栽の作業を一貫して行う地域もあります。
人工林伐採後、森林造成を行う場所の多くが枝条や根株、前生植生などで被覆されている状況にあり、そのまま苗木を植え付けることは困難です。仮に植え付けることができても、下刈りなどの保育作業が困難になったり、植栽木が前生植生に被圧されるなど、成林に至るまでの困難さが増します。こうした事態を回避するために行う作業が地ごしらえです。
植栽作業を容易にするために、林地に散乱している枝条を片付けることが重要です。枝条があると、植え穴を掘る際に邪魔になり、作業の工程が遅れることがあります。また、枝条が散乱していると植栽作業中の移動にも支障をきたすことがあります。そのため、地ごしらえによって枝条を整理し、植栽作業をスムーズに進めることが求められます。
地拵え作業において、末木枝条などの有機物は重要な役割を果たします。以下にその理由を詳しく説明します:
- 養分の供給源:末木枝条は土壌に養分を供給します。これにより、樹木や他の植物が成長し、健康的な状態を維持できます。
- 表層土の流亡を抑える:末木枝条は土壌表面を覆い、雨水や風による土壌の流失を防ぎます。これにより、土壌の肥沃性を保ちます。
- 土壌の物理的・化学的条件を改善:末木枝条は土壌の保水性を向上させ、通気性を促進します。また、有機物分解により土壌のpHを調整する効果もあります。
- 土壌の乾燥や霜柱を防ぐ:末木枝条は土壌を覆うことで蒸発を抑え、乾燥を防ぎます。また、冬季に霜柱が発生するのを防ぎます。
地ごしらえの目的は以下の通りです:
- 植栽作業を容易にする: 林地に散乱している枝条を片付けることで、植え穴を掘る際の工程をスムーズに進めることができます。
- 植栽作業を安全に行えるようにする: 林地に枝条が散乱していると、歩行中につまずいて転倒したり、転落の危険があるため、安全性を確保します。
- 植栽木が生育しやすい環境をつくる: 雑草木が存在すると、植栽された苗木が被圧されることがあります。また、大きな末木や枝条が残っていれば、植栽された苗木が被陰を受けやすくなります。
地ごしらえがきちんとされていると、後の作業である下刈りが楽になります。具体的な理由は以下の通りです:
- 雑草木の刈り払い: 地ごしらえでの雑草木の刈り払いをしっかり行うことで、植生の回復を少し遅らせることができます。これにより、苗木の成長を妨げる雑草を減らし、森林の健全な発展を促進します。
- 残材の整理: 地ごしらえで残材が整然と整理されていれば、下刈り作業の工程がはかどり、安全性も増します。整理された状態で作業を進めることで、作業効率が向上し、事故のリスクを低減できます。
地ごしらえの方法にはいくつかの種類があります。以下にそれぞれの方法とその特徴を説明します:
- 全刈り地ごしらえ:植栽予定地の全面にわたって雑草木を刈り払う方法です。
- 植栽予定地の全面にわたって雑草木を刈り払います。
- 最も一般的な方法で、刈り払った雑草木は末木や枝条と一緒に林地のいくつかの場所に集められます。通常、等高線沿いに筋状に置かれることが一般的です。この方法は横筋棚積み地ごしらえとも呼ばれます。
- 筋刈り地ごしらえ:植栽する列だけを刈り払い、残りはそのまま放置する方法です。この方法は以下の場合に採用されます
- 植栽密度が低い場合: 植栽密度が高いと、全刈り地ごしらえと変わらなくなります。したがって、密度が低い場合に筋刈り地ごしらえを選択します。
- 寒風害を防ぎたい場合: 筋刈り地ごしらえによって、苗木を寒風から保護することができます。
- 刈り払った雑草木は残った列に沿って置かれますが、残存筋の植物が繁茂すると植栽木を被圧することがあります。また、ノネズミやノウサギによる食害も発生しやすいです。
- 坪刈り地ごしらえ:
- 苗木を植え付ける場所の周囲だけを刈り払います。
- 筋刈り地ごしらえに準じた利点と欠点がありますが、刈り払う面積が小さくなります。
- 具体的な特徴は以下の通りです:
- 利点:
- 作業の諸緑化が図られる。
- 刈り払う範囲が狭いため、効率的に作業が進められます。
- 欠点:
- 植栽木の被圧が強くなり、食害も発生しやすくなります。
- 先行地ごしらえ(伐採前地ごしらえ・準備地ごしらえ):
- 主伐に先立って、林内の雑草木を刈り払います。
- 伐採前の作業が容易になり、刈り払い作業が楽です。
- 作業の危険度が低くなり、移動がしやすくなります。
- ただし、植栽までの期間が長いと再度の刈り払いが必要になることがあります。
- 特殊地拵え:低質林や災害によって荒廃した木を伐倒・除去する作業を指します。この作業は安全性や環境保全性にも重要です。
地拵えを行うことで、その後の植え付け作業を楽にし、安全面を確保することができます。
地ごしらえは、不要な雑草木を除去するだけでなく、枝も集めて片付ける作業まで行われます。植栽する苗木が小さい(苗高が低い)場合は、ていねいな地ごしらえを行います。その理由は、苗木が小さければ、より細かい枝条でも、残っていれば苗木を被陰することがあるからです。コンテナ苗を専用器具で植栽する場合は、通常より粗い地ごしらえでも問題ありません。その理由は、土の埋め戻しが必要ないため、植栽時の夾雑物の除去を神経質に行わなくても良いからです。必要以上に細かい枝や落ち葉まで片付けるような潔癖な地拵えは避けるべきです。なぜなら、地表面が裸出すると、表土流亡(土壌の侵食や流失)が発生しやすくなり、林地の保護に不利になるからです。林地の生態系や土壌の保護を考えると、適度な地拵えが必要です。以下に、集積の方法とそれぞれの特徴を詳しく紹介します。
- 棚積み地ごしらえ:末木・枝条・刈り払った雑草木を集めて、適当な間隔で棚のように積み上げる方法です。通常、等高線沿いに棚を作ることで、地拵え後の林地での移動が水平方向になり、移動が楽になります。以下のポイントに注意しながら棚積み地ごしらえを行います
- 隙間をつくる: 林地を上下に移動できるように、適当な間隔で棚に隙間をつくります。これにより、枝条などの量が多い場合でも効率的に移動できます。
- 積み上げた棚の安定: 積み上げた棚が下方に移動しないように、伐根のあるところに積み上げるか、杭を打ちます。
- 樹木の影響: 棚をつくる位置の樹木を伐採せずに、そこに集積することもあります。ただし、その樹木の樹冠が植栽木の成長に影響する場合は、1~2mの高さで幹を伐ることを検討します。特に広葉樹の場合、残された幹から後生枝が発生し、やがて植栽木を被陰することがあることに注意してください。
- 枝条散布地ごしらえ:末木・枝条・刈り払った雑草木を林地全体にまき散らす方法です。以下にその特徴と理由を詳しく説明します。
- 特徴:
- 大きな枝などは、散布しやすいように細断されます。
- 枝条などの量が少ない場合に採用されます。
- 地表面の保護に適しています。
- 雑草木の量が少ない場合やコンテナ苗を植える際に採用されます。
- 理由:
- 土壌水分の蒸発を防ぐ: 散布により土壌の水分蒸発を防ぎます。
- 雨水による表面侵食を緩和: 散布された枝条が表面を保護し、雨水による侵食を減少させます。
- 腐植質の補給: 散布により林地全体に腐植質が補給されます。
- 注意点:
- 植栽作業の工程が増えます。
- 散布された枝条が大きいと、下刈り作業の工程が落ち、危険度も増します。特にヒノキの乾燥した枝条は硬いため注意が必要です。
- 巻き落とし:末木・枝条・刈り払った雑草木をまとめて谷筋に落として集積する方法です。植え付けられる範囲が増え、作業範囲に雑草木が散らからない利点があります。ただし、生産性の高いエリアをつぶす可能性がある点に注意が必要です。以下にその特徴と理由を詳しく説明します。
- 特徴:
- 巻立てで落とす: 作業が容易になります。
- 植栽可能な面積が増える: 植栽作業や後の下刈り作業がしやすくなります。
- 理由:
- 地拵え後の林地に枝条などが残らない: 巻き落としによって林地全体から雑草木が集積されるため、地拵え後の林地に残ることはありません。
- 斜面での最適な利用: 谷筋から斜面下部に枝条などを集積することで、斜面で最も生産力の高い場所を有効に使えないことを防ぎます。
- 水圏の生態系への影響: 常水がある渓流に枝条などを集積すると、水圏の生態系を乱す可能性があるため注意が必要です。
- 火入れ地ごしらえ:末木・枝条・刈り払った雑草木を集めて燃やす方法です。現在ではほとんど行われない方法であり、雑草木が作業エリアに残らず、後続作業の効率化が望めます。ただし、山火事の可能性があるため注意が必要です。以下にその特徴と理由を詳しく説明します:
- 利点:
- 植栽作業が楽になる: 散布された雑草木が燃えることで、植栽作業がスムーズに進みます。
- 下刈り作業が楽になる: 燃えた雑草木は後の下刈り作業を簡略化します。
- ノネズミの被害軽減: 火入れによってノネズミの隠れ家が減少し、植栽木への被害が軽減されます。
棚積み地ごしらえの作業を進める際のポイントを以下にまとめます:
- 棚の位置を決める:
- 棚をつくる場所を選定します。
- 枝条などを横向き(等高線方向)にして積んでいきます。
- 植栽可能な面積を広くする:
- 棚をできるだけコンパクトにすることが大切です。
- 上下の棚と棚の間隔は、大きい方がよいです。
- 安定させる:
- 集積した枝条などが後から移動しないよう、安定させます。
- 伐根にかけるように積み始めます。
- 枝条と切株の管理:
- 伐根がない場所では、枝条や刈り取った幹でつくった杭を打ち、そこに集積します。
- 大きな枝条は短くしたり、二又のものは一本にしたりします。
- 雑草や伐採木の切株は、下草刈り中に危険を引き起こすことがあります。作業中に、切株につまずいたり転んだりすることがあります。特に、伐採木の切株が高い位置にある場合、キックバックやつまずきによる転倒のリスクが高まります。そのため、安全のためには切株を地面に近い位置で処理する必要があります。
- 理由:
- 移動や集積がしやすいため、ある程度の長さがあった方が積んだ後に安定します。
- 切る手間が増すので、必要以上に短くしないようにします。
- 浮き石があれば、拾って棚の斜面上側に接地させて置きます。
地拵え作業において、枝条や幹が湾曲している場合、湾曲の内側を下側にして積むことが重要です。これにはいくつか理由があります:
- 押さえやすさとコンパクトさ:湾曲の内側を下にすることで、枝や幹をしっかりと押さえることができ、コンパクトに集積できます。これにより、材料が暴れにくくなります。
- 安定性:湾曲の内側を下にすることで、積み重ねた材料が安定し、動きにくくなります。
また、枝条などの片付けは、できるだけ生木に近い状態で行うことが望ましいです。乾燥すると硬くなり、ナタやノコでの切断が難しくなるため、水分が多い状態で作業することをおすすめします。
総括すると、湾曲した枝や幹を適切に積むためには、これらのポイントに注意することが大切です。
地拵え作業において、重機を使用する際のポイントを以下にまとめます:
- ブッシュカッターによる刈り払い:重機が侵入できる林地では、ブッシュカッターを使用して草や低木を刈り払うことができます。
- グラップル(特にロングリーチグラップル)による枝条の移動・集積:重機のグラップルを使って湾曲した枝や幹を移動させ、地拵えに適した位置に集めることができます。集材作業の後に連続して行うと効果的です。
- バックホーやブルドーザーによるササ類の地下茎の剥ぎ取りや耕耘:重機を使用することで、作業の省力化が図れます。作業にかかる人工数が減少し、作業者は肉体労働から解放されます。また、重機を使用することで作業の安全性も高まります。
総括すると、重機を適切に活用することで、地拵え作業を効率的かつ安全に行うことができます。
地拵え作業において安全管理を徹底することは非常に重要です。以下に注意すべきポイントをまとめます:
- 林地を移動する際の転倒・転落:斜面や不安定な地形での移動時には特に注意が必要です。適切な靴や歩行姿勢を保ち、転倒を防ぎましょう。
- 斜面での落石:斜面で作業する際には、上からの落石に注意しましょう。ヘルメットを着用することで頭部を保護できます。
- 刈り払い機やチェーンソーによる事故:雑草木の刈り払いや枝条の切断時には、機械を正しく操作し、安全な距離を保つことが大切です。
- キックバックによる事故:集積した細かい枝条を切断する際には、チェーンソーのキックバックに注意しましょう。適切な切断技術を身につけて作業しましょう。
- ナタ・ノコによる怪我:雑草木の刈り払いや枝条の切断時には、ナタやノコを正しく使い、自身の安全を確保しましょう。
- 他人に対する事故:枝条などを移動させる際には、周囲の人々に注意を払い、事故を防ぎましょう。
- 熱中症:作業中は適切な水分補給と休憩を取り、熱中症にならないようにしましょう。
