7月7日にフォレストリー・ラボ中級が開催されました。
今回のラボの内容は、枯れ木の安全な伐木方法をお教えしました。
里山のような森は、昭和30年代頃までは手入れが行き届いていました。しかし、電気やガス、化学肥料の普及に伴い、次第に管理が放棄されるようになりました。現在、都市緑地や特別緑地保全地区として残っているまちなかの森は、半世紀ほど前に放棄された「かつての里山」です。そうした「かつての里山」の多くは、今では枯れ木が非常に多く見られる状態です。
間伐(特に切り捨て間伐)を行う森林には、ほぼ必ず枯れ木があります。
枯れ木は森林や市街地の両方に存在しますが、市街地の方が枯れ木が倒れた際の危険性や被害がはるかに大きいです。
毎年、市街地にある枯れ木が倒れて、車や家が被害を受けるニュースを耳にします。
枯れ木には、幹や枝葉まで完全に枯れているものと、根元だけが枯れているものがあります。
枯れ枝が落下して、下を歩いている人に当たると大怪我をすることもありますし、台風のときには樹の上部だけが折れる可能性もあります。
枯れた木はそのまま朽ちていきますが、放置するといくつかの被害が発生するリスクがあります。例えば、強風や台風で倒れる危険性があり、建物や人に被害を及ぼす可能性があります。また、シロアリなどの害虫が住み着き、住宅に被害をもたらすこともあります。
枯れ木になると、時間が経つにつれて木に含まれていた水分がどんどん抜けていきます。水分が抜けて乾燥した木は、衝撃に弱くなり、非常にもろくなります。そのため、雨で根っこが腐ったり、強い風が吹いたりすると、簡単に倒れてしまいます。
倒れた木が大きいと、その下敷きになって怪我をする危険性が高まります。
シロアリは放置された枯れ木に住み着くことがあります。シロアリが家屋に侵入すると、木材が被害を受ける可能性があり、修理には高額な費用がかかることがあります。
さらに、オオスズメバチも枯れ木の空洞に巣を作ることがあります。オオスズメバチは非常に強力な毒を持ち、攻撃的な性質があるため、枯れ木の周辺が危険地帯になることがあります。
枯れ木の伐採が難しい理由は、木の状態によるものです。枯れ木は生木と比べて「ツル」が効きにくいのです。
ツルとは、木を伐採する際に重要な役割を果たす部分で、伐倒する方向をコントロールするための支点となります。ドアの蝶番に例えると、蝶番の芯(留め金)にあたる部分がツルです。
森林で枯れ木の伐採を行う際、ツルが効かないと狙った方向に木を倒すことが難しくなります。つまり、枯れ木は伐採の際にコントロールが効きにくく、想定した方向に倒れなかったり、倒れる途中で制御が難しくなったりすることがあるのです。
枯れ木のツルが効きにくくなる理由は、乾燥によって木のしなりが少なくなるためです。ツルは、生木のしなる性質を利用して伐倒方向をコントロールする技術です。生木は曲げに強く、しなりやすいため、伐採時にツルが効果的に機能します。しかし、乾燥している枯れ木はしなりが少なくなり、ツルが効かなくなるのです。
木の中心に近い芯材よりも、樹皮に近い辺材の方がしなりやすいです。受け口が閉じるまで辺材が繋がっていることで、伐倒方向をコントロールできます。しかし、外側から枯れている木は、左右のツルが効かず、受け口が閉じる前にツルが切れてしまいます。
倒れ始めたら制御することはできず、ツルが切れると完全にコントロール不能になります。
安全に伐採するためには、チルホールなどを使ってコントロールすることが重要です。ただし、使用できるかどうかは樹木の状態によって決まります。例えば、周囲に障害物がある場合や、逆重心の木を起こしながら伐採する場合などにチルホールが有効です。
立木が枯れると、土壌から水分を吸収しなくなり、乾燥して弱くなります。そのため、チルホールを使った伐倒など、生木のときには簡単にできる作業が、枯れ木になると難しくなってしまいます。
林業の災害事例では、枯れた松の木を伐倒中に起こった事故が報告されています。
事故の発生状況
作業者が間伐作業を行っている最中、伐倒の障害となる枯れた松の木を伐採したところ、その木の幹が折れて落下し、近くの立木の枝に当たって複数の部分に折れ、そのうちの一つが作業者に向かって落下し激突したと推定されます。枯れた松の木は根元が大きく傾斜し、上部が伸びていたため、作業者は上部が折れて自分の方向に落下することを予期していなかったとされています。
事故の原因
- 受け口を適切に作らず、伐採木の切り口が斜めになっていたため、伐採木が勢いよく落下したこと。
- 枯れ木の伐倒前に周囲の状況を十分に確認しなかったこと。
- 枯れ木がどの程度腐朽しているかを確認しなかったこと。
災害の防止対策
- 受け口や追い口などの基本的な伐採方法を省略せずに行うこと。
- 枯れ木を伐採する際は、周囲の立木や地形を確認し、安全に伐倒できる方向を選定すること。
- 枯れ木が隣接木に当たらないよう、ロープなどで伐倒方向を制御する方法を選択すること。
- 枯れ木の腐朽具合をハンマーで叩いたり、チェーンソーで切ったりして確認すること。
- 枯れ木の伐倒作業は一人で行わず、同僚と協力して安全対策を行うこと。
- 伐倒が安全に行えない場合は、作業を中止すること。
これらの対策が重要であり、作業前の準備と確認が事故を防ぐために不可欠です。
枯れ木の伐採は通常の伐採とは異なる点がありますが、特に以下のポイントには特別に注意が必要です。
近づく前に、上部の枯れ具合を確認します。全体が枯れて倒れそうなのか、一部の枝が落ちてきそうなのかをチェックします。枯れた枝が折れて途中で宙ぶらりんになっていることもあるので、注意が必要です。
足元に落ちている枝を片付けることは重要です。落ち枝が足元を散らかしていることが多く、急な時に足に引っかかったり、伐倒した木が跳ね上がったり飛び散ったりする可能性があります。そのため、事前に片付けを行うことが大切です。
伐倒前には、樹高以上の距離を全方向に確保して退避することが重要です。枯れ木は予想外の方向に倒れることがあるため、伐倒の担当者以外の見学者やサポートを行う人は、倒そうとしている方向だけでなく、360度全方向から樹高以上の距離をとって安全地帯に退避するようにしましょう。
枯れ木が倒れる際には加速度がかかり、枝や幹が折れることがあります。特に幹が「く」の字に折れて根元に落ちる場合は危険です。また、地面に倒れて枝が飛び散ることも多いため、伐倒時には周囲に人がいないようにすることが重要です。
伐倒の担当者は慎重に受け口や追い口を作りながら、樹冠が動き始めたら速やかに退避します。退避が確認できた後、事前に張っておいたロープを引いて安全な距離から伐倒を行います。
枯れ木の伐採は通常の伐採とは異なり、ツルがほとんど機能しないことがあります。枯れ木は材質が粘り気がなく、「ボキッ」「ボソッ」と折れてしまうことがあり、部分的に腐朽が進んでいることもあります。
通常の伐採では、受け口や追い口で残したツルが伐倒方向と速度をコントロールしますが、枯れ木ではこのツルがほとんど機能しません。そのため、360度退避や事前に設置したロープを利用して安全に伐倒することが重要です。
大風や雨の後は特に注意が必要です。台風などの強風や雨の後には、枯れ枝が折れていることがよくあります。これらの枯れ枝が何かに引っかかっていることもあります。また、腐朽が進んで柔らかくなった箇所は雨水を吸って重くなり、自然に落ちやすくなります。
そのため、大風や雨の後は作業を始める前に念入りにチェックを行うことが重要です。
「無理しない」のが一番大切です。枯れ木は通常の伐採よりも危険性が高いので、自分たちの力では扱えない作業は行わないことが最も重要です。
これらのポイントを押さえながら、受講生の皆さんに枯れ木の状態を確認していただき、どのように伐木するか、検討していただき、実践していただきました。
近自然林業において、枯死木や老木は生物多様性にとって非常に重要な役割を果たします。これらの木は、多くの動植物の生息地や食物資源として機能し、森林生態系の種多様性を維持するために欠かせません。
通常、林業では木が成熟段階に達したときに伐採されるため、木が自然の寿命を全うすることはほとんどありません。
成熟段階では、光の競争に負けた木が枯死木となりますが、その量は少なく、太い木はほとんどありません。一般的に、枯死木は森林の老齢段階で多く見られます。枯死木の原因には、木の寿命、病気や虫害、強風、雷、雪などが含まれます。この老齢段階の有無が、天然林と人工林の大きな違いです。そのため、人工林でも動植物にとって重要な枯死木を導入する必要があります。
枯死木は特定の生物にとって重要な生息地となります。枯死木には様々な条件があります。立ち枯れや倒れた木、樹種や太さ、日陰や日向、湿気の度合い、そして枯れたばかりか腐りかけかなどによって、生息する生物も異なります。
ドイツでは森林に住む生物の3分の1が、直接的または間接的に枯死木に依存しているとも言われています。
枯死木を生息地とする生物には、さまざまな種類がいます。
- 哺乳類: コウモリ、ネズミ、テン、ヤマネ、リスなど。
- 鳥類: キツツキ、フクロウ、シジュウカラ、ヒタキ、コマドリ、キバシリ、ツグミなど。
- 爬虫類: トカゲやヘビなど。
- 両生類: カエルやサンショウウオなど。
- 昆虫: 甲虫類、ハチ類など多様な種類。
- 軟体動物: カタツムリなど。
- 菌類: さまざまな種類の菌類が見られます。
- コケ植物、地衣類: 湿った枯死木にはこれらの植物が繁茂します。
枯死木は、これらの生物にとって重要な生息地となります。
枯死木は天然更新において非常に重要な役割を果たします。地表では他の植物が繁茂しにくい環境や病原菌の影響で天然更新が困難な場合でも、倒木の上では湿度が保たれやすく、競争相手も少ないため、新しい植生が育ちやすくなります。
枯死木は土壌保護にも役立ちます。倒木が雨水の勢いを和らげ、土壌の流出を防止する役割を果たします。
枯死木は炭素の貯蔵庫として非常に重要です。長期間にわたり、大気中の二酸化炭素を吸収し、貯蔵する役割を果たします。これにより、気候変動の緩和に貢献しています。
東ヨーロッパの原生林調査によると、枯死木の量はおよそ50-200 m³/haであり、一部の場所では300 m³/haを超えることもあります。
しかし、人工林ではこれほどの枯死木量を維持するのは難しいです。研究によると、特定の生物が増えるためには、ある一定以上の枯死木が必要とされています。例えば、オオアカゲラには50 m³/ha、ミユビゲラには20 m³/ha、甲虫には30-60 m³/ha、軟体動物には50 m³/ha程度が必要とされています。
ドイツでは枯死木の増加を進めていますが、2012年の連邦森林在庫調査によると、全国の枯死木の平均量は約20m³/haです。これはあまり多くないため、枯死木の蓄積をさらに増やす必要があります。枯死木は年々分解されていくため、持続的な供給が求められています。
持続可能な林業や近自然林業では、森林内の保全が生物多様性の重要な基盤となります。これにより、森林の多様な生態系が維持され、動植物の生息地が保護されます。例えば、持続可能な森林管理は、森林の多面的機能を確保し、生態系に配慮した施業を通じて、社会経済にも貢献します。
次回のラボは8月4日を予定しています。
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