8月3日に「フォレストリー・ラボ中級」が開催されました。
今回のラボの内容は 「小型車両系建設機械の運転に関する特別教育」 の1日目を行いました
林業の現場でも、木材の積み込みや土の整地・掘削など、建設機械を使う場面は多くあります。
しかし、機械は便利な反面、大きな力を持つため、安全な取り扱いを知らずに使うと事故につながる危険性があります。
そこで、労働安全衛生法に基づき、正しい知識と技能を身につけるために「特別教育」が必要になります。
「小型車両系建設機械」とは、ブルドーザーや油圧ショベル(ショベルカー)などの建設機械のうち、
機体の重さが3トン未満のものを指します。
例えば…
- 整地・運搬・積込み用 → ブルドーザー、トラクターショベル
- 掘削用 → ミニショベル(バックホー、ユンボ)
これらはエンジンやモーターで動き、どこでも移動して作業ができるのが特徴です。
一方で、基礎工事専用の大型機械や3トン以上のものは、この「小型」には含まれません。
安全衛生特別教育とは?
日本では、危険を伴う作業を行うときに「労働安全衛生法」に基づいた教育を必ず受けなければなりません。
その一つが 「安全衛生特別教育」 です。
特別教育が必要な理由
- 建設機械やチェーンソーなどは便利で力強い道具ですが、誤った使い方をすると重大事故につながります。
- 「知らなかった」「うっかりした」では済まされない事故を防ぐために、作業に入る前に安全の基礎をしっかり身につける必要があります。
- 事業者(会社)は、労働者に特別教育を受けさせなければならない義務があります。
受けずに作業をさせると、事業者が 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 になることもあります。
特別教育の種類
「特別教育」は作業内容によっていくつか種類があります。代表例は…
- チェーンソーを使った伐木作業
- 胸高直径70cm以上の大径木の伐採
- 小型車両系建設機械の運転
- 刈払機(草刈り機)の取り扱い
- 足場の組立や解体作業
つまり「命の危険がある作業」に入る前に、知識(学科)と体験(実技)の両方を学ぶ仕組みです。
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転業務に係る特別教育について
1. 法令上の位置づけ
労働安全衛生法第59条では、危険・有害な業務に従事する労働者に対し、事業者が「特別教育」を実施する義務が定められています。
小型車両系建設機械(機体重量3トン未満)の運転はその対象業務であり、未受講者を運転業務に就かせることは法令違反となります。
違反時には、
- 事業者に対し 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
- 労働災害発生時には 使用者責任や民事上の損害賠償リスク
- 労災保険給付の一部不支給や監督官庁からの行政指導
といったリスクが想定されます。
2. 教育の対象となる機械
特別教育の対象は、以下の「機体重量3トン未満」の車両系建設機械です。
- 整地・運搬・積込み用:ブルドーザー、トラクターショベル(ホイールローダー)
- 掘削用:油圧ショベル(ミニユンボ等)、ドラグショベル
※3トン以上の機械は「技能講習」対象となり、別途免許が必要です。
3. 教育カリキュラム
厚生労働省告示に基づき、以下の内容が必須とされています。
学科教育(計6時間)
- 車両系建設機械の種類・特徴(1時間)
- 機械の構造(2時間)
- 取り扱い方法(2時間)
- 作業中の災害事例と防止策(1時間)
- 関係法令(1時間)
実技教育(計3時間)
- 作業装置の操作(1時間)
- 走行操作(2時間)
合計9時間(1~2日間)で修了可能
4. 修了後の効力
教育を修了した労働者には「修了証」が交付されます。
事業者は、当該修了証をもって安全教育を履行したことを証明でき、現場での小型車両系建設機械の運転を合法的に行うことが可能となります。
5. 企業にとってのメリット
- コンプライアンス遵守
法令違反を回避し、行政指導や刑事罰リスクを低減。 - 労働災害防止
教育により、誤操作や視野不良による接触事故・転倒事故を防止。 - 企業イメージ向上
安全教育を徹底することで、発注者や元請からの信頼性が高まる。 - 生産性の向上
正しい操作知識の習得により、作業効率の改善・機械損耗の軽減が期待できる。
特別教育講師の資格要件について
1. 講師の選任は「企業の責任」
労働安全衛生法に基づく特別教育は、教育内容だけでなく講師の適格性も重要です。
講師の知識や経験が不足していると教育効果が低下し、結果として労働災害や法令違反につながる可能性があります。
そのため、企業は「教育実施体制の適正化」の一環として、信頼性の高い講師を選任・委託することが責務となります。
2. 講師に求められる条件
厚生労働省の通達では、特別教育を担当できる講師の要件について以下の基準が示されています。
学科教育(座学)を担当する講師
- 労働安全衛生に関する専門知識を有する者
- 車両系建設機械の構造や作業方法に関する十分な知識を有する者
- 関連法令に精通している者
(例:労働安全コンサルタント、建設機械のメーカー技術者、安全管理者経験者 など)
実技教育を担当する講師
- 当該機械の運転等について、3年以上の実務経験を有する者
- または、運転技能講習の指導経験を有する者
(例:長年現場で小型車両系建設機械を安全に運転してきた作業責任者、技能講習インストラクター など)
3. 講師の典型的な資格・経歴
企業が安心して任せられる講師の例は以下のとおりです。
- 労働安全コンサルタント(国家資格者)
- 建設機械運転技能講習の指導員資格を有する者
- 林業技士、森林施業プランナー等の業界専門資格を持つ者
- 安全管理者としての実務経験を有する者
- 小型車両系建設機械の運転経験が豊富な現場の責任者
4. なぜ講師の資格が重要なのか?
特別教育は「法律で義務付けられた安全教育」です。
そのため、教える人の知識や経験が不足していると教育の効果がなくなり、事故や法令違反につながる可能性があります。
講師がしっかりとした資格や経験を持っていれば、
- 現場で実際に役立つ知識を学べる
- 法律に則った正しい教育を受けられる
- 修了証の信頼性が高まる
といったメリットがあります。
以下は厚生労働省が公開している「労働安全衛生法における特別教育の概要」です。
労働安全衛生法における特別教育の概要
労働安全衛生法第 59 条第 3 項の規定にもとづき、事業者は、厚生労働省令で
定める危険又は有害な業務に労働者をつかせるときは、その業務に関する安全
又は衛生のための特別の教育を行わなければならない。特別教育を必要とする
業務は労働安全衛生規則第 36 条に規定されている機械集材装置の運転、チェー
ンソーによる伐木、小型車両系建設機械の運転など 49 の業務。
特別教育の細目
特別教育の実施について必要な事項は、特別教育規程(厚生労働省告示)によ
り科目、範囲、時間が定められている。
科目の省略
事業者は、特別教育の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有し
ていると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略する
ことができる。
省略が認められる者とは、
当該業務に関し上級の資格を有する者
当該業務に関し職業訓練を受けた者 など
教育の実施主体
教育は、通達により、事業者が実施しても、外部の講師に委託してもさしつえな
い。
講師の要件
講師の資格要件は定められていないが、通達により、教習科目について十分な知識、
経験を有する者でなければならないこととされている。
記録の保存
事業主は、特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、3 年間保存しなけれ
ばならない。
関連条文
労働安全衛生法
(安全衛生教育)
第 59 条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めると
ころにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、
厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行
なわなければならない。
労働安全衛生規則
(特別教育を必要とする業務)
第 36 条 法第 59 条第 3 項 の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
7 機械集材装置(集材機、架線、搬器、支柱及びこれらに附属する物により構成され、動力を
用いて、原木又は薪炭材を巻き上げ、かつ、空中において運搬する設備をいう。以下同じ。)
の運転の業務
8 胸高直径が 70 センチメートル以上の立木の伐木、胸高直径が 20 センチメートル以上で、か
つ、重心が著しく偏している立木の伐木、つりきりその他特殊な方法による伐木又はかかり木
でかかつている木の胸高直径が 20 センチメートル以上であるものの処理の業務
8 の 2 チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務(前号に掲げる
業務を除く。)
(特別教育の科目の省略)
第 37 条 事業者は、法第 59 条第 3 項 の特別の教育(以下「特別教育」という。)の科目の全部又は一
部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての
特別教育を省略することができる。
(特別教育の記録の保存)
第 38 条 事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、
これを 3 年間保存しておかなければならない。
(特別教育の細目)
第 39 条 前 2 条及び第 592 条の 7 に定めるもののほか、第 36 条第 1 号から第 13 号まで、第 27 号及
び第30号から第36号までに掲げる業務に係る特別教育の実施について必要な事項は、厚生労働大
臣が定める。
昭和 48 年 3 月 19 日基発第 145 号通達「労働安全衛生法関係の疑義解釈について」(抜粋)
12 法第 59 条関係
問 法59条に定める特別の教育は、特定の講師に委託して行ってもさしつえないか。なお、
講師の資格如何。
答 さしつかえない。なお、特別の教育の講師についての資格要件は定められていないが、
教習科目について十分な知識、経験を有する者でなければならないことは当然である。
関連条文
3
林業関係の特別教育規程
○機械集材装置の運転の業務に係る特別教育
学科教育
科 目 範 囲 時 間
機械集材装置に関する知識
機械集材装置の集材機の種類、構造及び取扱いの方法 機械集材
装置の索張り方式 集材方法
3 時間
ワイヤロープに関する知識 ワイヤロープの種類 ワイヤロープの止め方及び継ぎ方の種類 2 時間
関係法令 法、令及び安衛則中の関係条項 1 時間
実技教育
科 目 範 囲 時 間
機械集材装置の集材機の運転 基本操作 応用運転 4 時間
ワイヤロープの取扱い ワイヤロープの止め方、継ぎ方及び点検方法 4 時間
○胸高直径が 70 センチメートル以上の立木の伐木等の業務に係る特別教育
学科教育
科 目 範 囲 時 間
伐木作業に関する知識 伐倒の方法 伐倒の合図 退避の方法 かかり木の種類及びその処理
3 時間
チェーンソーに関する知識
チェーンソーの種類、構造及び取扱い方法 チェーンソーの点検及び
整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法
2 時間
振動障害及びその予防に関する知識
振動障害の原因及び症状 振動障害の予防措置 2 時間
関係法令 法、令及び安衛則中の関係条項 1 時間
実技教育
科 目 範 囲 時 間
伐木の方法 大径木及び偏心木の伐木の方法 かかり木の処理方法
4 時間
チェーンソーの操作 基本操作 応用操作 4 時間
チェーンソーの点検及び整備 チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法
2 時間
○チェーンソーを用いて行う立木の伐木等の業務に係る特別教育
学科教育
科 目 範 囲 時 間
伐木作業に関する知識 伐倒の方法 伐倒の合図 退避の方法 2 時間
チェーンソーに関する知識 チェーンソーの種類、構造及び取扱い方法 チェーンソーの点検及び
整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法
2 時間
振動障害及びその予防に関する知識
振動障害の原因及び症状 振動障害の予防措置 2 時間
関係法令 法、令及び安衛則中の関係条項 1 時間
実技教育
科 目 範 囲 時 間
伐木の方法 胸高直径が七十センチメートル未満の立木の伐木の方法 かかり木でかかつている木の胸高直径が二十センチメートル未満であるものの処理方法
2 時間
チェーンソーの操作 基本操作 応用操作 2 時間
チェーンソーの点検及び整備
チェーンソーの点検及び整備の方法 ソーチェーンの目立ての方法 2 時間
<参考>
○小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育
学科教育
科 目 範 囲 時 間
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)(安衛則第三十六条第九号の機械の
うち令別表第七第六号に掲げる機械をいう。以下同じ。)の原動機、
動力伝達装置、走行装置、かじ取り装置、ブレーキ、電気装置、警
報装置及び走行に関する附属装置の構造及び取扱いの方法
2 時間
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の作業に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の種類及び用途 作業装置及び作
業に関する附属装置の構造及び取扱いの方法 小型車両系建設
機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)による一般的作業方法
2 時間
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転に必要な一般的事項に関する知識
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転に必要な力学 コンクリート造
の工作物等の種類及び構造 土木施工の方法
1 時間
関係法令 法、令及び安衛則中の関係条項 1 時間
実技教育
科 目 範 囲 時 間
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の走行の操作 基本操作 定められたコースによる基本走行及び応用走行
4 時間
小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の作業のための装置の操作
基本操作 定められた方法による基本施工及び応用施工
2 時間
次回のラボは9月7日を予定しています。
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見学したい方は、お気軽にお問い合わせください。
