植栽は、森づくりにおいて重要な作業の一つで、苗木を植えて特定の樹種で森林を作ることを指します。
主伐後に何も植えずに放置すると、周囲の環境に強く依存する樹種が林に育ち、計画通りの森を作ることが難しくなります。
植栽を行うと、目標とする樹種の森林を育てることができます。
植栽するにあたり、「適地適木」という考え方があります。つまり、植物にはそれぞれ適した生育環境があり、植栽する木を選ぶ際には、その植物の特性を考慮する必要があります。ベテランの山師からよく伝えられるのは、「尾根にはマツ、沢にはスギ、中間にはヒノキ」という言葉です。これは、乾燥した尾根にはマツが、湿気の多い沢にはスギが、その中間にはヒノキが適しているということを意味しています。
植栽作業は主に春に行われ、通常は林地を整理する地拵え作業が事前に行われます。
植栽の最適な時期は、早春で、シュート(注1)が伸び始める前です。
(注1)シュートとは、植物の茎や枝から新しく伸びてくる若い芽のことです。植物が成長すると、茎や枝の先端から新しい芽が出てきます。これがシュートです。シュートは、植物が大きくなるために必要なもので、植物の種類によってさまざまな形で現れます。木本植物では、シュートは細長い茎のように伸びますが、草本植物では、葉のように平らに広がっていくこともあります。シュートは、植物の成長や繁殖に重要な役割を果たしています。樹木の成長は主に「伸長成長」と「肥大成長」の二つのプロセスで進行します。伸長成長は木の先端で起こり、新しいシュートが頂端の細胞分裂組織によって伸びます。肥大成長は木の内部で進み、維管束形成層と呼ばれる部分で細胞が分裂し、木部(材)と師部(樹皮)を形成します。新しい葉は新しく伸びたシュートに付着し、シュートが伸びれば伸びるほど葉も増えます。着葉量はシュートの数と伸長量に比例し、枝が多く伸びれば樹木にはより多くの葉が付きます。
- その理由は、その年の主軸の伸長成長(幹の形成の最初の段階)が、苗木が定植された状態で始まるからです。
- 苗木が直立状態にしっかり固定されると、主軸は真上に伸びやすくなります。苗木が不安定な状態にあると、主軸が曲がりやすくなります。
- シュートが伸長し始めた苗木は、取り扱いに慎重に注意する必要があります。
- シュートが伸び始める初期段階では、シュートは脆弱で、折れやすく、傷つきやすいです。
針葉樹を植える方法には、基本的に2つあります。一つは根が露出している裸苗(通常の苗木)を植える方法であり、もう一つは苗木がコンテナに入っているコンテナ苗を植える方法です。
裸苗(通常の苗木)は根に土がついておらず、軽くて運搬しやすく、価格も安いです。ただし、根っこが露出しているため、非常にデリケートで乾燥に弱く、植えるまでの保管には注意が必要です。
最近開発された「コンテナ苗」は、製造コストを削減し、造林作業も省力化できると期待されています。ただし、はだか苗に比べると価格が少し高くなります。
植栽密度は、植物の特性や立地条件(地形、気候、雪深さなど)、経営目標(どのような木材を生産するか)、コスト(植え付け時の費用や初期の保育費用)などを総合的に考慮して決定されます。
植栽密度とは、1ヘクタールあたりに植える苗木の数を表す指標で、通常は「本/ha(ヘクタールあたりの本数)」で表されます。
植栽密度を高めに植えることを「密植」、低めに植えることを「疎植」と呼びます。特定の本数以上が密植で、以下が疎植という厳密な定義はありませんが、通常は1ヘクタールあたり2,500本から3,500本が標準的な植栽密度です。したがって、1ヘクタールあたり4,000本以上を密植、2,000本以下を疎植と考えることができます。
近年は造林コストを下げるために、疎植が推奨されることがあります。なぜなら、疎植では植栽本数が少なくなるため、苗木の代金や植え付けにかかる手間(人件費)が少なくて済むからです。
植栽密度と植栽配置によって、苗木同士の間隔(植栽間隔)が決まります。
地形や気候条件によって、植える苗木同士の間隔を考慮する必要があります。また、どのような目的でどの木を育てるかによって、植栽密度も大きく変わります。
傾斜地に裸苗を植える手順は次の通りです。以下、必要な準備と手順を説明します。
準備するもの:
- 苗木
- 苗木を運搬するための袋
- 鍬(唐鍬)
- 尺竿
購入した裸苗(山出し苗)は、通常コモや苗木梱包シートに包まれていますので、苗木を取り出す直前まで包みをほどかないようにしましょう。
苗木運搬用の袋は、側面から苗木を取り出せる専用の苗木袋(帆布製のリュックサックが便利です。苗木袋がない場合は、肥料袋などの丈夫なビニール製の袋でも構いません。ただし、裸の苗木を持ち歩くことは絶対に避けてください。
鍬は、山林用の唐鍬が一般的に使いやすいです。
- 現場が石礫で多い場合、十字鍬(片側がツルハシになっている唐鍬)が石を取り除くのに適しています。
- 石礫が少ない場合、ツルハシのついていない唐鍬が軽くて扱いやすいです。
尺竿は、植栽間隔の目安に使う道具で、専用のものを用意することもできますが、現地にある材料で作ることも可能です。
- 現地で作る場合は、できるだけ真っ直ぐで、細く(軽く)、丈夫な木の幹を必要な長さ(植栽間隔分)に切ります。
- 尺竿の代わりに、鍬の柄を使うこともあります。その場合は、自分が使う鍬の柄の長さを把握しておくことが重要です。
裸苗を植栽するときの手順は以下の通りです。
- 植栽位置を決める。
- 地表の地被物を取り除く。
- 植え穴を掘る。
- 苗木を植え穴に置く。
- 植え穴に土を入れる。
- 土を踏み固める。
- 苗木の根元に地被物を敷く。
詳しく説明していきます。
1.植栽位置を決めます。方法は以下の通りです。
- 植え始めの位置から、尺竿を使用して次の植栽位置を決めていきます。
- 上下の間隔が均等になるように注意します。上下の間隔を決める際には、尺竿を地面に沿ってあてず、水平に(谷側を空中に浮かせて)あてることが大切です。
- 通常は、水平方向に移動しながら植えていきます。なぜなら、移動を最小限にすると作業が楽になるからです。また、水平に揃った列にすると、後の下刈り作業がしやすくなります。等高線に沿って、各樹種ごとに指定された間隔で植える場所を決めます。
- 障害物(切り株、根、岩など)がある場合は、植栽位置を少しずらして配置します。水平方向にずらすことが重要です。
- 必要に応じて、巻尺を使って植栽位置に目印の棒を挿入することもできます。
- 完璧な揃った植え位置を求めることは難しいので、神経質になりすぎないようにしましょう。
2.地表の地被物を取り除く作業をします。
- その後の作業で植え穴に地被物が混入しないようにするために、地表面から地被物を取り除きます。
- 唐鍬を使って、植栽位置の周囲にある地被物(落葉、落枝、小石など)を外側に移動させ、地表面を露出させます。
- 植え付け位置を中心に、60~70cmの範囲を片付けます。
- 斜面上側の土を埋め戻しに使うので、その土量を考慮して、斜面上側を広めに片付けると良いでしょう。
3.植え穴を掘る手順は以下の通りです。
- 植栽位置に、苗木の根を広げて植えることができる大きさの穴を掘ります。
- 穴の一辺は約40cmくらいで、円形に掘るのは難しいため、通常は四角形になります。
- 穴の深さは、斜面下側で見て、苗木が苗畑で育てられたときの地際までが十分に埋められる深さにします。通常は約30cmくらいです。
- 掘り出した土は、斜面下側に積み上げます(盛ります)。
- 穴を掘り終えたら、積み上げた土を唐鍬の背で押しつけます。
- 穴の中に石や根があれば、取り除きます。これは、苗木の根と埋め戻した土との密着を妨げるものを除去するためです。
- 穴の底を唐鍬で軽くほぐしておくと良いです。
4.苗木を植え穴に置く手順は以下の通りです。
- 穴の中央に、根を広げて苗木を仮置きします。
- 根をしっかり伸ばした状態で植えると、根がしっかりと地面に張り、木が健康に成長しやすくなります。
- 穴が深すぎる場合は、斜面上側の地表に近い部分の土を崩して穴に入れ、高さを調節します。 この作業の理由は、腐植質の土を根の周囲(新しい根が最初に広がる部分)に入れることです。
5.植え穴に土を入れる手順は以下の通りです。
- 苗木の位置が決まったら、穴に土を入れていきます。使用する土は、植え穴の斜面上側の土です。
- 苗木の位置が安定するまでは、片手で苗木の根元を持って支え、もう一方の手で唐鍬を使って、斜面上側の地表に近い部分を削るように崩して、その土を穴に入れます。これにより、根の周囲に腐植質の土を入れることができます。この際にもう一度、根が丸まっていないかを確認します。
- 根の周囲にある程度の土が入ったら、指を使って土を押し込みます。これにより、根と周囲の土を密着させます。
- 斜面上側を崩しながら、穴に土を入れていきます。土を入れながら、埋め戻した土の表面が水平になるようにします。また、苗木の地際までしっかりと埋まるようにします。
- 土以外のもの(地被物など)が混入しないように注意します。根と土の間に異物があると、根が水を吸収するのを妨げ、乾燥の被害が発生しやすくなります。
6.土を踏み固める手順は以下の通りです。
- 苗木の上の方を持ち、軽く上に引き上げながら、根元の土を足で踏み固めます。
- 苗木を左右に小さく揺すりながら、少しずつ引き上げるようにしながら踏みます。しっかりと体重をかけて踏むことが大切です。
- 根と土がしっかりと密着することで、根が土に含まれる水分を吸うことができます。
- 降雨中の作業であっても、土がじゅぶじゅぶになっていない限り、強めに踏んでも大丈夫です。
- 外側から内側に向かって踏んでいくことで、押された土が内側に集まり、根元が凹まないようにします。
- 埋め戻した土の表面が沈んで根が浅くなったら、土を追加して調節します。表面を水平に整えます。
- 苗木の上の方を持ち、少し強めに引き上げてみて、苗木が動かないか確認します。苗木が動くようなら、もっと強く踏み固めます。
- 土を踏み固めることで、土がしっかりと固まり、風などで倒れにくくなります。
- 苗木が抜けてしまうような大きな動きがあった場合は、植え直す必要があります。
- 作業全体を通して、常に根と土を密着させるように心掛けましょう。
7.苗木の根元に地被物を敷く手順は以下の通りです。
- 植え穴を掘る前に除けた地被物など、手近にある地被物を埋め戻した土の上に敷きます。 これにより、地表の乾燥を防ぐことができます。
植え方のバリエーションには、以下の方法があります。
一鍬植え:
- 小苗を使用し、作業効率を重視する方法です。
- 植栽位置の地被物を取り除き、地面に唐鍬を突き刺して隙間をつくり、その中に苗木の根を押し込みます。最後に植えた場所を足で踏み固めます。
ていねい植え:
- 大苗を使用し、植栽後の成績を高めたいときに使います。
- 植え穴を大きめに掘り、底に崩した表土を盛って苗木の根を広げるように据えます。
斜め植え:
- 積雪地の傾斜地で主にスギを植栽する際に採用される方法です。
- 苗木を地表面に対して直角に近い角度で植え、斜面下側に傾けます。これは、雪圧に逆らわずに苗木を守るためです。
- 掘り上げた土を斜面下側に盛り、それを枕にして苗木を据えます。
これらの方法は、植栽する樹木や地形に応じて選択されます。
平坦地に裸苗を植栽する手順は次の通りです:
- 植え穴の掘削:
- スコップを使用して、掘りやすいように植え穴を掘ります。唐鍬よりもスコップの方が適しています。
- 掘り上げた土は、積んでおく場所を確保しておきます。このとき、除けた地被物と混ざり合わないように注意します。
- 土の埋め戻し:
- 斜面上側の土を崩して埋め戻すことができないため、掘り上げた土を使って埋め戻します。
- 埋め戻しやすいように土を積み重ねておきます。その際、地被物と混ざり合わないように注意します。
- 埋め戻し始めに使用する土は、できるだけ表土を利用します。
- 地被物の除去:
- 地被物を広めに除去しておくと、作業がスムーズに進みます。
- 土の別置き:
- 穴の掘り始めの土と深いところから掘り出した土を別の場所に積んでおくと、作業が効率的に進みます。
これらの手順に従うことで、平坦地での裸苗の植栽作業が円滑に行われます。
コンテナ苗を植栽する場合
コンテナ苗とは、特別な容器で育てられた苗木のことです。この容器には、水平方向に根が巻きつくのを防ぐリブやスリットがあります。また、容器の底面が開いているため、根が垂直方向に成長しやすくなっています。
コンテナ苗の特徴は、形状が均一で、一般に軽量・小型であり、植栽時に乾燥などの影響を受けにくく、根が傷みにくいことです。また、最も大きな利点は、植栽可能な時期が広いことです。ただし、長期間の乾燥や土壌の凍結、積雪期、また寒風などの厳しい条件下での植栽には注意が必要です。
コンテナ苗の植栽は、基本的に一クワ植えで行います。裸苗と異なり、根系がすでに培地と一体化しており、根鉢と土壌の密着を得ることが目的です。植栽道具を地面に突き刺してからこじって植穴をあけ、そこに苗木を植えます。
植穴に有機物が混入しないようにするのは、丁寧な植え方と同じくらい重要です。
コンテナ苗を植える際は、裸苗を植える手順と基本的には同じですが、いくつかの点で異なります。
- 灌水の調整:
- 植栽日の2日前くらいから、コンテナ苗への灌水を止めます。
- 培地が湿っていると、苗木を抜いた際に培地が崩れやすくなるためです。
- 苗木の運搬:
- 通常、コンテナから苗木を抜いて持ち運びます。
- 肩掛け袋や腰袋、腰カゴなどを使用して、苗木を運搬します。
- 植え穴の準備:
- 植え穴(孔)をコンテナ苗の培地がスポッと入るように開けます。掘るのではなく、培地の大きさに合った専用の道具(ディブル、スペード、プランティングチューブなど)を使用します。
- 傾斜地では、唐鍬も使いやすいです。石礫が多い場所では、唐鍬が適しています。
- 地被物の除去:
- 穴を開ける部分だけで、地被物を取り除きます。
- 苗木の植え付け:
- 各道具の使い方に従って、地面に穴を開け、苗木を落とし込みます。
- 植付け器具で植穴を開けると、コンテナ苗を挿入する際に根鉢と土壌の間に空間ができやすくなります。この空間によって根鉢の主根が十分に伸びないことがあります。そのため、植穴の底に少し土を入れてから苗を挿入し、踏み固める際に根鉢と土壌が密着するようにします。
- 植栽後の転圧(踏み固め)が不十分だと、強風や凍結などの影響で根鉢が抜け出る可能性があります。そのため、しっかりと踏み固めて、根鉢と土壌が密着するようにする必要があります。
植栽作業における重要なポイントは次のとおりです:
- 苗木の扱い方: 特に裸苗は、非常に注意して扱います。根が乾燥しないように、神経質になりましょう。
- 作業条件: 植栽作業は曇りで風のない日に行うのがベストです。晴天だと日光や風で根が乾燥しやすくなります。降雨直前も作業に適しています。日光の強い日や強風の時は、できるだけ植え付けを避けるのがベストです。しかし、どうしてもやらなければならない場合は、苗木や植穴、土を覆う土などが乾燥しないように、じっくり注意が必要です。
- 降雨時の作業: 降雨中に作業する場合、土を埋め戻す際に水を含んだ土を練らないようにしましょう。また、強く踏み固めないように注意します。土の構造が破壊されると、根腐れや干害が起こりやすくなります。
- 植え方の深さ: 植える深さは地表に近いほど乾燥しやすくなります。風の強い場所や乾燥しやすい土壌では少し深めに植えると良いでしょう。一方、重たい土や排水の悪い場所では浅めに植えると良いですが、根腐れには注意が必要です。
植栽作業中の安全管理には以下の点に留意します。
- 移動時の安全: 林地を移動する際は、転倒や転落に注意しましょう。特に斜面では落石に警戒し、邪魔な石をどかしたり穴を掘ったりする際には、落石が発生する可能性があることを認識し、上下作業を避けます。
- 熱中症予防: 長時間の作業や暑い環境下では熱中症に注意が必要です。こまめに水分補給を行い、適切な休憩を取りながら作業しましょう。帽子や日焼け止めなどの日除け具を利用して、日光から身を守ることも重要です。
- 危険生物への対処: 作業中には危険生物に注意が必要です。ハチやマムシなどの生物に刺されたり噛まれたりしないように、適切な防護具を身に着け、注意深く行動しましょう。また、作業の季節や地域によって危険生物が異なることにも留意します。
これらの安全対策を遵守し、植栽作業を安全に行いましょう。
